今後同じことで悩む人が減れば何よりです。
相続時精算課税
相続税には「相続時精算課税制度」というものがあります。
制度の目的としては、年を取った世代よりも若い世代の方が金銭が必要になるケースが多いです。そうですね、家を購入したり車を購入したり、子供の教育にお金を使います。
しかし、お金の多くは年を取った世代に多く集まっており、実際に若い世代に渡るのは相続時であり、多くはお金が必要なピークポイントを過ぎています。そうなると、経済は活性化しないので国としては残念です。そのため、相続時精算課税制度というものを設けました。
これにより、一定の条件を満たせば贈与取得時の贈与税の計算を、実際に相続事案が発生するまで延期することができます。
つまり贈与をもらった若いときに支払う税金は0円になるのです!
「お得ですね♪」
・・・と思ったあなたは実は損をしています。
実際に贈与税をもらったときに税金の支払いは0円ですが、相続時に再計算されます。つまり、相続時の計算に積みあがっていくのです。早くもらっただけで後で払う税額は変わらないということです。よって、徳はしていないということです。
実際にのところ一番お得なのは、まとめてもらうのではなく、毎年小分けに100万円ずつ贈与を受ける方法です。通常は(暦年課税)110万円までは非課税となり贈与税はかかりません。そのため、毎年暦年課税以内なので、毎年税金が0円となります。
※ただし、定期金給付契約があるとみなされる場合は課税対象となるので注意!
ただ、相続時精算課税は前述の早めにまとまった資金をGETできるメリットもあるのでお得感は十分あります。
住宅を取得する際に住宅取得資金を贈与した場合、2500万円までが非課税として扱われます。
相続時精算課税選択の特例
そんな相続時精算課税ですが、一定の条件があると記載しました。
60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。年齢制限があり、割と厳しい感じがします。
No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁
しかし、住宅取得のために資金を得た場合は以下の特例が使用可能です。
平成33年12月31日までに、父母又は祖父母からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合で、一定の要件を満たすときには、贈与者がその贈与の年の1月1日において60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。そうですね、これで一気に制限が緩くなります。一方で住宅取得に関する制限がきつくなります。用途不問であった相続時精算課税が、住宅取得だけという名目に変わるわけです。
No.4503 相続時精算課税選択の特例|国税庁
相続時精算課税選択の特例が適用できるか分からない
昔、税理試験の相続税法をやっていて、税法の条文類は丸暗記をしていたので、手続きなんて簡単だろうと思っていましたが、今回確定申告するときに難題が出てきました。
やはり実務はやらないとできないようです。
贈与税でとりあえず、200万円もらったとします。このうち100万円を住宅取得の頭金に入れました。残り100万円はローンの返済に残しました。このまま暦年課税だと200-110万円の90万円に課税されてしまいます。今は金がないので勘弁です。
そこで、相続時精算課税の特例が適用できないか、
税務相談会で税務署の職員さんに相談してみました。
回答1「ええ、適用できますよ。」
よし、そうであれば相続時精算課税選択特例の方が手続きが楽そうなので一件落着。
しかし、その後手続きを進めると1点見落とし発見。
平成33年12月31日までに、父母又は祖父母からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合で、一定の要件を満たすときには、贈与者がその贈与の年の1月1日において60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。そうか・・・全額か!
・・・
受贈者の要件
(4) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
No.4503 相続時精算課税選択の特例|国税庁
税務署の職員さんに一応確認してみると、
回答2「はい、半分の100万円しか頭金として入れていない場合はダメですね。全額の要件には当てはまらないはずです。」
回答1の税務署の人は何だったのか・・・もしかすると私の説明が悪かったのかもしれない。
念のため、確定申告会場の税務署職員さんに聞いてみた。
回答3「ええ、行けますよ、とりあえず申告して、ダメだったら修正申告してください。」
・・・ 行けるんかい!
「いや、ここにこんなことが書いてあって・・・」と尋ねると、答えが180度変わりました。なんだかなー・・・という気分ですが仕方ありません。
結論
頭金は全額投入して、契約書にも贈与額以上の頭金の記載がないと相続時精算課税の特例は適用できない!
頭金は全額投入して、契約書にも贈与額以上の頭金の記載がないと相続時精算課税の特例は適用できない!
「でもでも、実はオプション代金合わせると、現金で200万円ぐらい払っているので頭金は200万円頭金に使ったことにして、住宅取得等資金に使ったことにできないか?」
と後々考えていましたが、ダメなようです。
相続税法や措置法にはオプションのような細かい話はありませんが、通達レベルでインターネットに転がっていました。ちょっとソースを再び見つけることができませんが、「明確に分離できないもの(ガス設備とか?)」に該当すれば行けますが、オプションは「明確に分離できるもの」に該当するので住宅取得等資金には含まれないのが一般的な解釈のようです。
話はずれますが、相続時精算課税の特例はもう一つ落とし穴があります。続時精算課税の特例は「贈与」をもらって、その後「住宅取得」という流れが必要です。この流れが逆になると特例の適用ができないので修正申告が必要となります。これは明確に記載されているので、気づかずに申請してしまうと、数十年後の相続時にえらいことになるかもしれません。
で、話はずれましたが、今回は仕方がないので、特例ではない普通の相続時精算課税で申請します。正直今回は年齢制限を余裕で突破しているので、無理して特例を使わなくても良かったのですが、ローン控除の手続き書類の内容が変わってくるのでどちらを使うか確定する必要がありました。
相続時精算課税のもう一つの難題
実は相続時精算課税の手続きで難題がもう一つありました。これも法律の条文にも通達にもないので、実務をやっている税務署の職員さんに聞くしかありません。
今回200万円は、父名義で100万円、母名義で100万円としましょう。2つの口座から振り込まれました。たまたま2つに分かれただけで本来は父から200万円もらう予定でした。
税務相談会で税務署の職員さんに相談してみました。
回答1「ええ、親は親なので区別する必要はありません。」
確定申告会場の税務署職員さんにも聞いてみた。
回答3「ええ、一緒で行けますよ、とりあえず申告して、ダメだったら修正申告してください。」
回答1に不信が出てきたので、やや疑念をもって「ホントですか?」 と聞く、会場の中のより詳しい人がいるコーナーで聞くように言われました。
その後、何人かに相談してようやく結論がでてきました。皆さん優しく丁寧な教えてくれますが、回答がバラバラすぎて今一つ信頼できません。仮に間違ったことを教えられて申請してもこちらのミスになり修正申告となるはずなので、気になる人は税理士さんへ!
結論
口座の名義が分かれている場合はそれぞれの名義で相続時精算課税の手続きをしないといけない。
口座の名義が分かれている場合はそれぞれの名義で相続時精算課税の手続きをしないといけない。
そうです。今回の場合は、100万円と100万円で別々にできるので、ラッキーなことにどちらかの贈与は暦年課税で処理できるということになります。将来相続時に100万円分税金がかからなくなったことになります。